(No.16-9908)【曽徳深】


 7月9日の朝日新聞一面に、「外国人学校卒業生 国立大受験認める」の記事が、写真入り10段で報道された。文部省が 従来の見解を改め、朝鮮学校や華僑系学校、インタナショナルスクールの卒業生に対し、日本の中学校を卒業していなくても大学入学資格検定(大検)を受けられるようにし、大検合格者に大学受験を認めるという内容である。文部省は長年「検定を通過した教科書を使い、資格を持った教員が学習指導要領にのっとって教えることが大原則だ」の見解のもと、こうした朝鮮学校などは学校教育法上の「学校」とは認めず、そこでの教育しか受けていない人は、日本の大学に進学できないとしてきた。政府が日本弁護士連合会から「人権侵害だ」と是正勧告を受けた経緯から、政策変更の理由の一端は推測できるが、明確な説明が文部省からあったとは記事は伝えていない。「文部省はパンドラの箱をあけた」という声が出るぐらいだから、展望も五里霧中のようだが、いずれにせよ、日本の教育制度が変わる兆しが現れたと考えたい。
 人が生きていくには、2つの食べ物が必要である。ひとつは身体の食べ物、もうひとつは心の食べ物。身体の食べ物は、飢えを満たし、人間に生きる熱源を与える。心の食べ物は、空虚を満たし、人に生きる感動と勇気を与えてくれる。自分の郷土料理を食べ、独自の文化を心の糧とするのは、ごく自然なことである。国際化時代に、異質を排除するのではなく、受け入れる自信と寛容性が、その国の文化に豊かさをもたらすのではないのだろうか?


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