(No.22-2000.8)【曽徳深】


 「父親であることは、首相であるより困難だ」と英国ブレア首相は言った。7月7日の新聞の朝刊外信面すみに載った〈英首相の長男拘束、未成年者飲酒で〉のニュースである。ブレア首相の長男ユアン君(16歳)は試験が終わってロンドン中心部の繁華街に繰り出し、泥酔状態になっているところをパトロール中の警官に拘束されたのである。同じ日の新聞一面に、〈岡山バット事件/17歳少年、秋田で逮捕〉。金属バットで後輩の野球部員に重軽傷を負わせ、母親を自宅で殴り殺し、岡山から秋田へ、約1,300キロの道を自転車で走ったところを、15日ぶりに発見された。男子生徒の父親は、被害者と関係者に申し訳ないと詫びた後「きょう、息子が秋田の方で見つかったことを聞いて、ホッとしています」と語った。新聞は、そのときの父親の様子を、白いポロシャツにジーンズ姿で、険しく沈痛の面持ちと報道している。少年達の犯した罪の軽重は、「泥酔で拘束」は警察沙汰、「バットで殴打」は警察事件と表現するほどの差はある。が、その父親達にとっては同じような重みとして心にのしかかっているはずである。英国首相の言葉は、政治家のジョークと言うよりも、ひとりの父親の率直な声として受け止めたい。「17歳の犯罪」をめぐって、寺島実郎は、「社会総体で子供を大人に育てていく過程を『社会化』というが、戦後日本は『社会化』に失敗した極端な例であろう」と言っているが、社会を構成する基本単位が家庭であるなら、私達が先ず手をつけなければならないのは、家庭を家庭らしくすることではないだろうか?


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