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現在では想像もできないが、20年ほど前の中国のレストランは、恐ろしい所だった。服務員(ウエイトレス)さんは、こちらの発音が悪いと「アァ」とにらんだり、「没有(ない)」と却下、「糧票(穀物配給券)」を要求したり、餃子を「点
dian(注文)」する時は、個数でなく、重さで注文しなければならないなど、楽しいはずの注文は、予想もしない落とし穴の連続。中華料理の本場にいながら、夏休み1ヶ月の旅行で8キロも痩せてしまった。 帰国後、中国語のクラスへ向かう私の目は、狼のように輝いていたに違いない。教科書は丸暗記、発音はモノマネの域に達するまで練習した。日本にいながら、服務員さんと変な中国語で戦う夢を繰り返し見たほどだ。 お金を貯めて、次の中国旅行で無事に「点菜 diancai(料理を注文する)」できた時のうれしかったこと。ところが、またもや落とし穴。中国語の教科書には大抵「私は日本人です」という文が載っている。その中には、「是 shi」「日 ri」「人 ren」という発音が含まれていて、初級者には難易度が高かった。それを頑張って克服していたので、ニコニコと「私は日本人です」とあいさつした。すると服務員さんは「請上楼!(二階へどうぞ)」と宣告。閑散とした宴会場の大きな円卓で、当時の外国人料金を取られることになり、中国人の友だちは「どうして日本人だなんて言いだすんだ」と、むっとしていた。 |
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〈浅山友貴〉 |
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