紹興酒の話(1)

曽慕蓮(元・山西師範大学)

イラスト/浅山友貴  訳/豆彩編集部


  日本のある学校の生徒への調査で「中国についてどんなことを知っていますか?」という質問に、いちばん多い答えは意外にも「紹興酒」だった、という記事を最近読みました。紹興酒の日本での知名度の高さを証明しているでしょう。

 紹興は浙江省東部にある歴史と文化の地です。古代の大禹の治水から越王勾践・書聖王羲之、そして近代の女傑秋瑾・文豪魯迅・万人に敬われる周恩来、みな紹興と深い縁があります。その紹興で最も有名な産物、といえば紹興酒なのです。

 紹興酒は紹興地区で生産される黄酒の一種で、江蘇・浙江あたりでは老酒とも呼ばれています。紹興酒はもち米から醸造されるアルコール度15~20%の発酵酒です。中国で黄酒を醸造する地方はたくさんあり、同じ原料と同じ製法なのになぜ紹興黄酒だけがこれほど有名なのでしょう?良質な紹興鑑湖(かんこ)の水を使って醸造することが関係しているようです。


   紹興酒でよく目にする銘柄には加飯・花彫・元紅・善醸などがあります。製造過程のちょっとした違いにより、紹興酒に含まれる糖量が違ってきます。ワインに辛口・甘口があるように、紹興酒に含まれる糖量の違いにより、元紅酒に代表される辛口、加飯酒に代表されるやや辛口、善醸酒に代表されるやや甘口、香雪酒に代表される甘口の黄酒に分けられます。その中で加飯酒は最も多くの人に好まれています。知名度の高い花彫酒は実は紹興酒の銘柄ではなく、酒がめの外側に花や鳥・虫、また物語の人物などの彫刻と彩色が施されているためにこう呼ばれており、一般的に中には加飯酒が入っていることが多いのです。市販されているガラスびんに詰められた花彫酒は、その名にふさわしいといえないのです。

紹興酒には女児紅(にょじこう)・状元紅(じょうげんこう)という名のものもあります。昔の人は結婚し子どもが生まれるとかめに入った紹興酒を地中に埋め、その子が成人し結婚するときに長年貯蔵してきたその酒の蓋を開け、お祝いに来た客に振舞ったそうです。娘が嫁に行くときこの酒は女児紅、息子が嫁を娶るときは状元紅と呼ばれます。紹興酒は古ければ古いほどおいしく、このような年代物の老酒は芳香が鼻をくすぐり味にコクがあります。しかし、いまは元紅酒の銘柄の一つにすぎず、「十数年寝かせた老酒」というものではありません。

 紹興酒が多くの人に好まれるのは、色がきれいで香りがたかく味がまろやかでコクがある、というだけでなく、醸造過程で豊富な栄養物を形成するからなのです。分析では紹興酒には人の必須アミノ酸20種余が含まれているそうです。ビールを「液体のパン」というなら、紹興酒は「液体のケーキ」といってもいいでしょう。適度に紹興酒を飲めば食欲を増し、消化を助け、疲れを取り、栄養があって、つまり健康によいというわけです。

【戻る】


【PERINETホームページ】【PERINET企画サイト】


webmaster
Copyright(C)2002 PERI